時計・宝飾品業界では、精緻な意匠と高い品質を両立するためにCAD/CAMの活用が進んでいます。本記事では、その導入メリットや具体的な事例、選定時の注意点を紹介します。
従来の加工技術では困難とされていた入り組んだ形状や自由曲面であっても、多軸制御が可能な5軸加工機と最新のCAMソフトを組み合わせることで、精緻な再現が期待できます。一つの工程で多方向からの削り出しが行えるため、ワークの付け替えによる誤差も生じにくくなるでしょう。また、微細な送り制御によって得られる滑らかな表面は、その後の手作業による研磨時間を大幅に短縮し、製造全体の効率化を強力にサポートします。
CADデータから穴やポケットといった特定の形状要素を自動的に抽出するフィーチャー認識機能は、プログラミング作業の負担を軽減する有効な手段です。あらかじめ登録した加工ノウハウに基づき、最適な切削条件が自動で割り当てられるため、NCデータの作成時間を従来よりも短縮できる可能性があります。浮いた時間をデザインの考案やより高度な設計業務に充てることが可能になり、クリエイティブな側面でも大きな恩恵が受けられるはずです。
貴金属やチタンなどの高価な素材を使用する時計・宝飾品業界において、加工ミスによる材料の無駄は避けたい課題の一つです。CAD/CAMのシミュレーション機能を活用すれば、実際の加工前にパソコン上で工具の干渉や削り残しを詳細に確認できるため、プロセス全体の信頼性が高まります。事前に問題を把握して対策を講じることで、貴重な材料を効率的に使用できるようになり、結果として製造コストの最適化にも寄与すると考えられます。
シチズン時計は、多様化するニーズと開発サイクルの短縮に対応するため、SolidWorksとENOVIA SmarTeamを導入しました。3軸 CADへの移行で設計を可視化し、PDMによるデータ集中管理で部門間のリアルタイムな連携を実現。設計から製造を一貫したPLM環境で繋ぐことで、コストと期間の30%削減を目指し、精密さとファッション性を両立する「ものづくり」を加速させています。
時計の微細な部品加工には、直径が1ミリに満たないような極小径工具が頻繁に用いられます。こうした繊細な工具を使いこなすためには、機械が高回転スピンドルに対応していることはもちろん、CAM側で工具への負荷を分散させるツールパスを生成できるかどうかが重要です。急激な負荷変動による工具の折損を防ぎ、安定した加工品質を維持するためにも、微細加工に特化した機能の有無を事前にしっかりと確認しておくことが推奨されます。
時計の裏蓋への刻印や宝飾品の表面に施される繊細な彫り模様は、製品の付加価値を大きく左右する要素です。導入を検討する際には、3軸データから直接美しい加工パスを生成できるか、あるいは彫刻特有の細かな調整が容易に行える操作性を備えているかを確認しておきましょう。意匠性を重視する業界だからこそ、設計者のこだわりを正確に反映できる表現力豊かなソフトウェアの選定が、製品の完成度を高めるための鍵を握っているといえます。
どれほどデジタル化が進んだとしても、時計や宝飾品の最終的な品質を決定づけるのは熟練の職人による感覚です。そのため、新しいシステムが現場の製作フローにスムーズに溶け込めるか、職人が直感的に扱えるユーザーインターフェースを備えているかを考慮する必要があります。また、独自のノウハウをデジタルへ落とし込むための技術サポートが充実しているかどうかも、導入後の円滑な運用を支える重要なポイントとなるため、慎重な見極めが求められます。
SprutCAM Xは、時計や宝飾品の微細で複雑な造形を具現化するCAD/CAMソフトです。スイス型旋盤や多軸加工、彫刻、ワイヤー放電など多彩な手法に対応。高精度なシミュレーションが材料の無駄を防ぎ、重い3軸データも軽快に処理します。複雑なGコード生成を自動化し、直感的な操作で職人の技とデジタル技術を橋渡しします。製造工程の効率と精度を高い次元で両立させる点が強みです。
hyperMILLは、顕微鏡レベルの微細パーツや複雑な形状に対応するCAMソフトです。プラチナやチタン等の素材に対し、先進的な5軸加工技術を用いて正確なツールパスを生成し、優れた面品位を実現します。「フィーチャー&マクロ」による自動化や干渉回避シミュレーションにより、プログラミングと加工時間を短縮。追加の仕上げ工程を抑え、効率的で信頼性の高い製造プロセスを支援します。
ジュエリー製作のために開発された3軸esignは、宝飾品の設計に優れた3軸 CADです。履歴を保持するパラメトリック構造により、完成後でもサイズや石の配置を自在に調整できます。WindowsとMacの双方に対応し、Appleシリコン環境でも快適に動作。パヴェや石留めといった独自のツールが充実しており、直感的な操作が可能です。
CAD/CAMの導入は、5軸加工による複雑形状の再現や面品位の向上、プログラミングの効率化、シミュレーションによる材料ロス低減など、多方面で製造力を高めます。特に高価な素材を扱う時計・宝飾品業界では、工程の信頼性向上が大きな価値を持ちます。一方で、極小径工具への対応や彫刻加工の表現力、職人技術との親和性など、業界特有の視点での検討も欠かせません。自社の製作フローに合ったCAD/CAMを選定することが、品質と効率を両立する鍵となります。
複雑化する加工ニーズに応えるには、目的や工程に応じたソフト選びが欠かせません。
本特集では、2.5軸〜5軸加工に対応したソフトを「属人化防止」「ロボット連携」「低コスト運用」などの観点からわかりやすく整理。現場の課題にフィットする1本を選ぶための視点を提示します。
5軸分野における実績多数
NCシミュレーションも実装
必要最低限の機能が
月額1万円台から運用できる
※1.参照元:OPEN MIND公式サイトhttps://www.openmind-tech.com/jp/about-us/
※2.サポート対象加工機に一部制限あり
※3.参照元:AUTODESK公式サイト
https://www.autodesk.com/jp/products/fusion-360/overview
(情報は2025年6月6日時点)