CAMでの切削加工において、加工品質と効率を左右する重要な設定がピックフィードです。本記事では、ピックフィードの役割や面粗度との関係、品質を保つための適切な設定方法について詳しく解説します。
CAMシステムでツールパスを生成する際、工具が1回走査した後に次の走査線上へ移動する間隔をピックフィードと呼びます。ピックフィードはステップオーバーや送りピッチとも表現され、加工面の平滑さや加工時間にダイレクトに関わります。ピックフィードの間隔を大きく設定すると、工具が移動する回数が減るため加工時間を短縮できます。一方で、間隔を小さく設定した場合には、加工面が滑らかになる傾向があります。加工の目的に応じてこの数値をバランスよく設定することが、効率的な加工データの作成において重要です。
ボールエンドミルなどのR形状を持つ工具で加工を行う際、隣り合う切削パスの間に山状の削り残しが発生します。この削り残しの高さをカスプハイトと呼び、加工後の面粗度を決める主要な要素です。ピックフィードを広げるとカスプハイトが高くなり、表面に凹凸が目立つ仕上がりになります。逆にピックフィードを狭めればカスプハイトは低くなり、なめらかな表面を得ることが可能です。狙いとする表面粗さを実現するためには、カスプハイトの理論値を計算した上で、適切なピックフィード値を算定する手順が求められます。
加工工程においては、荒加工と仕上げ加工で求められる役割が異なるため、ピックフィードの設定値も大きく変化します。荒加工では大きな切削量を効率よく除去することが優先されるため、ピックフィードを比較的大きく設定して加工時間を抑える傾向があります。一方、仕上げ加工においては製品の寸法精度や表面の滑らかさが重視されるため、ピックフィードを小さく設定してカスプハイトを極力抑える制御が行われます。このように工程ごとの目的に合わせて数値を使い分けることが、加工全体にかかる時間と品質のバランスを整えることにつながります。
使用する切削工具の刃先形状によっても、適切なピックフィードの値は異なります。例えばフラットエンドミルを使用する場合は底面が平らであるため、大きめのピックフィードを設定しても平面を平滑に削りやすい特徴を持っています。しかし、ボールエンドミルのように先端が曲面になっている工具では、工具径に対するピックフィードの割合がカスプハイトの高さに直結します。さらにブルノーズ(ラジアス)エンドミルなど、工具のコーナーR形状に応じても削り残しの発生状況が変わります。そのため、工具の仕様を考慮した上で数値を決定するアプローチが欠かせません。
図面で指示された表面粗さを満たすためには、感覚に頼らず理論的な計算に基づいてピックフィード値を導き出す方法が有効です。ボールエンドミル加工におけるカスプハイト(h)は、工具半径(R)とピックフィード(p)を用いて計算できます。具体的な近似計算式としては h ≒ p2 / (8R) と表され、この式を変形させることで、許容されるカスプハイトから必要なピックフィード幅(p ≒ √(8Rh))を割り出すことが可能です。このように目標とする面粗度の数値をあらかじめ設定し、数式に当てはめて設定値を算出することで、仕様に合致した加工データを作成できます。
参照元: SAEILO公式HP(https://www.saeilo.co.jp/media/tech-blog/cimatron-blog-machining_pass_interval_and_surface_roughness)
CAM上で数値を入力した後は、加工シミュレーション機能を活用して実際の削り残し状態を視覚的にチェックすることが推奨されます。画面上で加工後の形状をグラフィック表示させることにより、数値計算だけでは気づきにくい曲面部分や傾斜部でのカスプハイトの変化を確認できます。特に傾斜面では、フラットな面と比較して実質的な送りピッチが変化し、削り残しが目立つ場合が存在します。シミュレーション段階でパスの間隔や面粗度を確認し、必要に応じて部分的な設定変更を行うことによって、実機での加工トラブルや予期せぬ面品質の低下を未然に防げます。
CAMにおけるピックフィードは、加工効率と表面品質のどちらにも大きな影響を与える重要な要素です。荒加工と仕上げ加工での使い分けや、使用する工具形状に応じた調整、ならびに理論式を用いた数値算出を行うことで、目標精度に沿った加工プログラムを作成できます。また、CAMのシミュレーション機能を併用して事前に削り残しを確認する運用も効果的です。日々の加工においてピックフィードの設定を意識し、加工品質の安定化や工程の効率化に役立ててください。
複雑化する加工ニーズに応えるには、目的や工程に応じたソフト選びが欠かせません。
本特集では、2.5軸〜5軸加工に対応したソフトを「属人化防止」「ロボット連携」「低コスト運用」などの観点からわかりやすく整理。現場の課題にフィットする1本を選ぶための視点を提示します。
5軸分野における実績多数
NCシミュレーションも実装
必要最低限の機能が
月額1万円台から運用できる
※1.参照元:OPEN MIND公式サイトhttps://www.openmind-tech.com/jp/about-us/
※2.サポート対象加工機に一部制限あり
※3.参照元:AUTODESK公式サイト
https://www.autodesk.com/jp/products/fusion-360/overview
(情報は2025年6月6日時点)