
削り残り部加工(残肉加工・レスト加工)とは、大径工具による荒加工や中仕上げ加工で除去しきれなかったコーナー部、溝底、深部などの「削り残し(残肉)」を、より小径の工具へと順次切り替えながら段階的に削り落とす切削加工手法です。
加工効率を上げるために大きなドリルやエンドミルで加工した後に残る「工具R(半径)の差分」に対し、「正確な残肉形状の把握」「段階的な小径工具への切り替え」「切削負荷を抑えたパス生成」を行うことで精密な形状へと仕上げます。削り残り部にいきなり小径工具を突っ込むと工具が折損するため、いかに負荷を均一に保ちながら削り落とすかが安定加工のポイントとなります。
精密金型や機械部品の製造において、削り残しの適切な処理は製品品質と工具寿命を左右する極めて重要な工程です。形状に応じて緻密なパス制御が求められます。
これらの削り残し処理を怠ったり計算を誤ったりすると、「仕上げ工具が倒れて目取れを起こす」「刃物が破損する」「金型の合わせ面でバリや隙間が生じる」といった致命的な加工不良に直結します。そのため、正確なストック認識と最適なパス作成を行うCAMの活用が不可欠とされています。
高硬度鋼や難削材の削り残り部加工では、コーナー部で工具への負荷が急増しやすく刃欠けが起きやすいため、材質の硬度に合わせた工具選定と送り速度の調整が極めて重要です。
特に焼き入れ後の金型加工やチタンなどの難削材では、微細な削り残しへの負荷集中が工具折損の直接的な原因となります。切り込み量や切削速度の条件を緻密にコントロールすることで、工具寿命と加工表面の品質を両立させることができます。
削り残り部加工は、ただ小さなエンドミルでなぞるだけの作業ではありません。工具の折損を防ぎ、綺麗な仕上げ面を得るためには、「荒加工後のストック把握」「段階的な中仕上げ」「精密仕上げ」という順序を踏むことが不可欠です。
まず、大径のエンドミルやラフィングエンドミルで削った後に、ワークのどこにどれだけの肉が残っているか(残肉形状)を正確に認識します。従来は作業者の経験で削り残し量を予測していましたが、削り残し量が不均一なまま小径工具を入れると、負荷の急増により「工具の折損」が発生します。
残肉が大きい場合は、いきなり最終サイズの工具を使わず、中間径のエンドミルを用いて段階的に残肉を削り落とします(ペンシル加工やレスト加工)。ここで重要になるのが、被削材の硬度と工具形状に応じた「首下長」と「コーティング」の選定です。
削り残し量が均一に均された後、最終指示Rに合わせた小径のボールエンドミルやフラットエンドミルで仕上げを行います。幾何公差や鏡面に近い面粗度が求められる場合は、工具の振れ精度を極限まで抑えた高精度ホルダーと微細エンドミルの組み合わせが必須となります。
標準的なエンドミル加工の他に、形状や深さに応じて以下のような工具やパス手法を組み合わさせます。
残肉加工における工具パスの選定ミスは、高額な小径超硬工具の頻繁な折損やワークの致命的な傷に直結します。高度なCAD/CAMソフトであれば、前工程の工具径とワーク形状から残肉領域を自動抽出し、負荷を均一に保つスムーズなツールパスを自動生成できるため、安全かつ短時間での加工が可能です。
削り残り部加工の成否を分ける最大の鍵は、「切削負荷の均一化」にあります。大径工具から小径工具へ切り替える際、コーナー部や壁際で急激に包み込み角(被削材と刃物の接触面積)が大きくなるため、適切なパス手法を選ばないと工具が破損します。
前工程の工具半径で残った角部の「V字状の残肉」に対し、コーナーに沿って一本のパスでなぞるように削り落とすのが「ペンシル加工」です。小径工具への負担を抑えつつピンポイントで除去できるため、金型加工などの効率化に欠かせません。ただし、残肉量が多すぎる場合は複数回に分ける追い込み設定が必要となります。
深さのある金型や構造部品の壁面に残った肉に対しては、上部から下部へ階層状に削り落とす「等高線残肉加工」が有効です。工具の軸方向負荷を一定に保てるため、長尺なロングネック工具を使用する際も、しなりやビビリ(振動)を最小限に抑えて安全に削り進めることができます。
自動車ボディや意匠性の高い製品金型など、複雑な3D曲面同士が交差する部境界に残った肉には、曲面に追従する多軸ツールパスを用います。「面のなめらかさを維持しながら余剰肉だけを取り除く」ことで、後工程での磨き作業(手仕上げ)の手間を劇的に削減します。
「残肉部で工具が折れる」「加工表面に段差が残る」といったトラブルの多くは、削り残し量の不正確な把握や急激なアプローチが原因です。最新のCAD/CAMソフトであれば、3Dモデルと前工程データから残肉を完全計算し、コーナー部で自動的に送り速度を落としたり円弧アプローチを入れたりする最適化が可能です。
削り残り部は立体的に複雑な形状をしていることが多く、手作業で削り残し範囲を計算してプログラミングするのは不可能です。三次元的な残肉の計算を手動で行うと、膨大な時間と計算ミスが発生してしまいます。
こうした課題には、CAD/CAMソフトの導入が不可欠です。CAD/CAMを利用すれば、前工程で使用した工具径とワークモデルを照合し、削り残しが発生しているエリアだけを自動で特定してくれます。
複雑な3D金型の削り残しパス作成も、CAM上で条件を指定するだけで完了。プログラミング工数を大幅に削減し、熟練者のノウハウに頼らない標準化を実現できます。
削り残り部加工では、小径工具や長尺工具(ロングネック)を使用するため、ホルダーやシャンク部がワークや治具に干渉する危険性が非常に高くなります。このリスクを回避するのがCAD/CAMの「高精度干渉・シミュレーション機能」です。
加工前に3Dモデル上でホルダーを含めたリアルな動きを確認できるため、工具の突出し量を最小限に抑えつつ、安全なパスを確保することが可能。刃物の破損や機械の衝突トラブルを未然に防げます。
また、製品形状の変更(設計変更)があった際も、CAM上でモデルを差し替えるだけで残肉計算が再実行され、ツールパスが自動更新されるため、迅速なリワーク対応が可能です。
3Dモデルの削り出しや粗切削加工を行う製造企業では、前工程で削り残された未加工領域(残肉)への追い込みパスを1つずつ手作業で指示しており、プログラミングの煩雑さと加工時間の長さ、工具摩耗が大きな課題となっていました。
そこで、CAD/CAMソフトの「未加工領域を自動認識してパス生成する機能」を活用し、手動指示なしで削り残り部への追い込みパスを自動生成。理想的な切削条件の適用と組み合わせることで、切削距離を実に98%削減し、実加工時間の88%削減と工具寿命2倍を達成するなど、劇的な生産性向上を実現しています。
CAD/CAMソフトを選ぶ際、最も重視すべきなのが「3Dストック(残肉)の自動追従・認識機能」です。前工程の加工結果を正確な立体モデルとして引き継ぎ、削り残しがある場所だけを的確に抽出できるソフトを選びましょう。
この機能が優秀なソフトを使えば、すでに削れている場所を空中カットする「エアカット(空振り)」を徹底的に排除でき、加工時間を大幅に短縮しながら正確な削り残し処理が行えます。
コーナー部や狭小部に入り込む際、工具への負荷を一定に保つアルゴリズムが搭載されているかも重要です。
直角コーナーで急激に刃物全体が素材に接触するのを防ぎ、円弧を描いてスムーズに入るアプローチ(トロコイド運動やアダプティブカットなど)を行えるソフトであれば、小径工具の折損を防ぎ、工具寿命を飛躍的に延ばすことができます。
削り残り部加工では、深いポケットや複雑な傾斜面を加工するために長い工具を使う場面が多くなります。そのため、刃先だけでなくシャンク(柄)や焼きバメホルダー、主軸ヘッドまで含めた高精度な干渉チェック機能が必要です。
特に5軸加工機を使用する場合は、角度のついたアプローチが多くなるため、干渉を検知した際に自動で工具の傾きを回避してくれる機能を持ったCAD/CAMを選ぶことで、安全な無人化運転が可能になります。
削り残し量が多い場所と少ない場所を自動判別し、負荷が大きいポイントだけ自動で送り速度(Feedrate)を減速させる機能が付いているかも確認しましょう。
負荷に応じた速度制御と滑らかなパス生成(スムーズリンク機能)ができるCAMを使用することで、加工面の段差や目取れ(削りムラ)を無くし、高品質な面粗度を実現できます。

hyperMILLは、単純な2.5D加工から複雑な3D・同時5軸加工における削り残り部(残肉)まで高精度に検出・加工できるCAD/CAMシステムです。ストックモデルや参照工具の情報から対象エリアを自動検知し、工具径を段階的に小さくしながら安全に残肉を除去します。
ポケットや輪郭の2.5D残肉処理はもちろん、フィレットやキャビティなどの3D曲面、さらには干渉を回避しながら最適な角度でアプローチする「5軸コーナー削り残り部加工」にも対応。刃物への負荷を均一に保つ最適なツールパスにより、プログラミング工数の大幅削減と高精度な面仕上げを実現します。
世界中で豊富な導入実績を持ち、2軸から同時5軸まで多種多様な加工に対応するCAD/CAMソフトです。
柔軟なツールパス作成機能と強力な自動化モジュールを備え、複雑な金型や精密部品の加工効率化に貢献します。
「取残し加工(レストラフ)」が前工程のストックモデルを立体的に認識し、無駄なエアカットを排除。「Dynamic OptiRough」や3D-HSTを活用することで、アンダーカット部の削り残りも効率的に除去します。
自動車や航空宇宙、ハイエンド金型など最高水準の精度が求められる製造現場で採用されている統合CAMです。
高度な加工シミュレーションとパス計算能力により、複雑な多軸加工でも安全かつ高速なプログラム生成が可能です。
「5-axis Rest Milling」により、前工程の加工情報をスマートに引き継ぎ。最小工具の使用を極力抑えた大径工具ベースの残肉パスを自動生成し、工具摩耗と加工時間をカットします。
大型金型や複雑形状の3軸・5軸高速加工に特化した、高機能なエキスパート向けCAMソフトです。
圧倒的なツールパス計算速度と高精度な干渉回避アルゴリズムにより、高品質な意匠面の仕上げを実現します。
「モデル削り残し領域切削」機能により、未加工エリアのみをピンポイントで抽出。残肉厚を閾値管理しながらストックモデルと自動連携し、ペンシル加工などで安全に残肉を処理します。
ワンボタンでのパス自動生成など、自動化・標準化に強みを持つ金型加工向けの3D-CAMソフトです。
現場のノウハウをルール化しやすく、初心者でも熟練者と同等レベルのNCプログラムを作成できます。
独自の「ダイナミックストック機能」が常に最新の残肉状態をトラッキング。Zレベルや輪郭の隅部加工において、前工具が届かなかったエリアのみを自動抽出して再荒加工を行います。
金型設計から切削加工までの一連のプロセスに特化した、金型メーカー向けの統合CAD/CAMシステムです。
電極作成や高速ミリ取り機能など、金型特有の工程を徹底的に効率化する機能が満載されています。
「Remachine(レスト加工)」機能が、前工具の届かなかったコーナーRを自動抽出。CleanupやPencilなどの手法を組み合わせ、細工具を段階的に割り当てて面品質を高次元で整えます。
自動車プレス金型や航空機部品など、ハイエンドな5軸加工・自動化領域で圧倒的な支持を集めるドイツ製CAMです。
実機と完全に同期した高度なシミュレーションにより、完全無人運転や高い安全性を実現します。
一貫した素材モデル追従機能により残肉を正確に認識。自動傾斜アプローチと高度な干渉回避を組み合わせることで、5軸加工での削り残り処理を超高速かつ安全に計算します。
SOLIDWORKS環境にシームレスに組み込まれ、設計データをダイレクトに活用できる統合型CAMソフトです。
独自技術の高速切削「iMachining」により、加工時間の劇的な短縮と工具寿命の延長を実現します。
3D HSRの「Rest Roughing(残加工)」機能が前工具の肉残りを正確に抽出。3D HSMのPencilやCorner Offset機能と連携し、切削負荷を均一に保ちながらコーナー部の残肉を処理します。
クラウド基盤で動作し、2.5軸から5軸加工までをカバーする高コスパなオールインワンCAD/CAMソフトです。
直感的な操作パネルとリーズナブルな導入コストにより、試作現場や中小製造業で広く活用されています。
パス設定時にソースを「前の操作から」にするだけで、残肉エリアを自動判別。「アダプティブクリアリング」を残加工に応用することで、小径工具への急激な負荷を防ぎながら安全に切削できます。
削り残り部加工(残肉加工)は、工具の破損リスクが高く、プログラミングや工具選定に高度な技術が求められる難度の高い工程です。特に小径工具での深部加工や高硬度鋼の処理では、手計算や感覚に頼った加工に大きなリスクが伴います。
最新のCAD/CAMを活用すれば、正確なストック自動認識、負荷の均一化パスの生成、高精度な干渉シミュレーションが可能となり、工具折損の防ぐとともに加工時間の短縮と加工品質の向上を実現できます。
「小径工具の折損を減らしたい」「削り残しパスの作成に時間がかかっている」「手仕上げの磨き工程を短縮したい」など、自社の課題に適したCAD/CAMソフトを選定し、削り残り部加工の生産性と安全性を飛躍的に高めていきましょう。
複雑化する加工ニーズに応えるには、目的や工程に応じたソフト選びが欠かせません。
本特集では、2.5軸〜5軸加工に対応したソフトを「属人化防止」「ロボット連携」「低コスト運用」などの観点からわかりやすく整理。現場の課題にフィットする1本を選ぶための視点を提示します。
5軸分野における実績多数
NCシミュレーションも実装
必要最低限の機能が
月額1万円台から運用できる
※1.参照元:OPEN MIND公式サイトhttps://www.openmind-tech.com/jp/about-us/
※2.サポート対象加工機に一部制限あり
※3.参照元:AUTODESK公式サイト
https://www.autodesk.com/jp/products/fusion-360/overview
(情報は2025年6月6日時点)